世界選手権 男子S4回戦 丹羽vsオフチャロフ

 とにかく見ていて楽しかった試合。丹羽もオフチャロフもスーパープレイの連発であるのももちろんそう。丹羽が今までにないぐらい感情を出していて、それに呼応するかのようにオフチャロフもド派手なガッツポーズ。お互いに死力を尽くしつつどこか楽しそうな雰囲気を個人的には感じており、これが天衣無縫か・・・と感じるような一戦だった。はい、前記事を引っ張り出したいだけですね。ただまあ本当にいい一戦でした。今大会のベスト試合の一つに間違いなくなるでしょう。

 さて、この試合の考察記事、みなさんは丹羽選手のことを中心に書くでしょう。しかし、私はこの試合でオフチャロフ選手のサービス展開に正直感動しました。
 
 そう、バンザイ展開を使っていたということです。

 バンザイ展開とはひと月前に私が投稿しました、サービス展開のことです。

バンザイ序文
バンザイ①
バンザイ②

 一言で表すならば、バックロングサービスを中心とした、相手の攻撃の択を狭めるサービス展開とでも言いましょうか。
 その展開を今試合のオフチャロフは多用していましたね。丹羽のバックにフォアサービスからナックル(もしくは上回転)→丹羽がバックで返球→オフチャロフの3球目。
 この試合は丹羽選手が絶好調だったため盛り返されてしまっていましたが、本来ならばオフチャロフの展開になるはずですし、ラリーの序盤は確かにオフチャロフ有利の展開でした。
 丹羽選手はオフチャロフのバンザイに対して2球目で決められる、バックハンドでのエースボールをもっておらず、少し変化を加えつつ合わせる程度しかバックハンドは行えていなかったですね。特に、試合の中盤ではさほど効いていないようにも見えますが、試合の終盤になればなるほど、合わせるようなレシーブが増えてきたように思います。
 これは、試行回数を増やしたことによる得点の期待値の上昇の結果です。もともと丹羽選手はバンザイに対してコースを突く or 回転をかけるのみで球の速度を上げることができませんでした。コースもオフチャロフのバック返球がメインでしたが、その質もだんだん落ちてきてましたね。その証拠に、特に最終セットの8-10では、オフチャロフは3球目で非常に強力なバックハンドを繰り出していますが、そもそも2球目の返球が今までで一番質が低かっただけにすぎません。

 序盤や要所要所で、バックロングサービスをオフチャロフは放っていますが、最終的にはナックルロング。これは回転の選択肢もナックルロングで減らすことが可能であるからです。
 オフチャロフの代名詞ともいえるバックサーブ。これを丹羽のバックロングに放つ展開も多くみられましたが、そこからの展開はさほどいいものとは言えません。それは丹羽のレシーブに①上回転②横回転の2種類の選択肢が生じてしまうからです。実際、オフチャロフはバックサーブでのバックロングの展開で思った以上に得点ができておらず、そもそも3球目の質がロングサーブからの展開の割に低い球も目立っていました。
 
 つまり、この試合において、オフチャロフのバンザイ展開の効果として①丹羽に安易なバック側への返球を催促することができたこと、②丹羽に安易な上回転での返球を催促することができたこと、の2点があげられます。これは、トッププロのみならず、一般レベルにまで落とし込むことが十分に可能な戦術です。

 回転量がすさまじいトッププロ、なかでもオフチャロフはサーブの回転量は随一でしょう。そんな彼が丹羽に対して施行した回転をかけていない、スピード重視のバックロングサービス。一般レベルならまだしもまさかトッププロ同士の試合で、多用されているシーンを見ることになるとは正直思っていなかったですね。
 丹羽選手がアジア選手権、シュシン戦でみせたバックサーブ展開も相手のレシーブの選択肢を狭めるために効果的でありましたが、そこに+速さによる時間的な選択肢の考慮を奪うバンザイ展開はトッププロにでも通用することが、この試合で証明することができました。

 そういえば最近バンザイからの展開練習を全くしていないですね。。。そろそろそういった実戦練習もしていきたいところです。