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   昨今の卓球理論において、その中心を担っているであろう打法・理論として肩甲骨打法が挙げられる。しかし肩甲骨打法の定義、指導法が一律でなく、また論理的にも破綻している部分が多々見られたいた。そのため、今回私が考え得る肩甲骨打法について提唱した。
   
   そもそも肩関節を用いた動作の主座は肩甲上腕関節であり、その副次的な動作として肩甲胸郭関節(肩甲骨)運動が加わっている。つまり肩甲骨打法も、まずは肩甲胸郭関節だけでなく、肩甲上腕関節が中心になった複合的な動作であると推察するほうが自然であると考えた。更に肩甲骨打法は、トッププレイヤーであれば自然に行っている打法と言われている。これはある程度の思慮を獲得した思春期〜青年期だけでなく、学童期の選手においても同様とされる。このことから肩甲骨打法とは、指導によって新規獲得されるものではなく、我々が行なっている動作の発展系の可能性であるのではと考えた。

   上記を踏まえると肩甲骨打法の定義として、 肩甲上腕関節自体のボールの進行ベクトルに対して水平方向の運動を行うこと を提唱する。関節自体の前ベクトル負荷により、肩関節群という単一の関節で下肢や腰を用いた従来の前ベクトル負荷が行えるということが肩甲骨打法のメリットであり、その本質と考えた。肩甲胸郭関節の動きは肩甲上腕関節の移動に伴って発生する二次的な動作であると推察する。

   ただし、肩甲胸郭関節を筋主体の一次動作とし、それに伴って肩甲上腕関節が移動する方法に対する実証は不十分である。今後、肩甲骨打法と肩甲骨周囲筋との関連性などを考察する必要がある。